アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が長く続く慢性的な皮膚の病気です。
特に乳児期や幼児期に多く、皮膚が乾燥しやすい子どもによく見られます。症状は良くなったり悪くなったりをくり返すため、毎日のスキンケアと治療を続けることが大切です。
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎は、「体質」と「環境」の両方が関係しています。
体質(遺伝的要因)
- アレルギー体質のお子さんに多く、家族にアトピー性皮膚炎、ぜんそく、花粉症などのアレルギー疾患がある場合、発症しやすいことが挙げられます。
- 皮膚のバリア機能が生まれつき弱いため、乾燥しやすく、外部からの刺激に敏感であることも要因の1つです。
環境要因
- ダニやハウスダスト(布団・カーペット・ぬいぐるみに多い)
- 汗や汚れ(肌の刺激になりやすい)
- 空気の乾燥(冬場などに悪化しやすい)
- 特定の食べ物(アレルギー反応を引き起こす場合)
- ストレス
アトピー性皮膚炎の症状
- 強いかゆみ(夜にかゆみが強まり、眠れないことも)
- 赤みやブツブツの湿疹
- 皮膚が乾燥してカサカサする
- 症状が良くなったり悪くなったりをくり返す
湿疹は顔・首・ひじやひざの内側など、皮膚がこすれやすい部位によく見られます。かゆくてかき壊してしまうと、皮膚が厚くなったり、色素沈着(黒ずみ)が起こったりすることもあるため、かゆみを抑える治療が重要です。
アトピー性皮膚炎の治療方法
治療は、次の3つが基本の柱です。
①スキンケア(肌の保湿)
- 保湿剤を毎日塗る(お風呂上がりと朝が効果的)
- 刺激の少ない石けんを使い、しっかり洗い流す
- 汗をかいたらこまめに拭く(シャワーを使うのもおすすめ)
②生活習慣の見直し
- 寝具や衣服は清潔に保つ(ダニ・ホコリ対策)
- 食物アレルギーが関係する場合は、医師と相談して食事を調整する
- ストレスを減らし、お子さんがリラックスできる環境をつくる
③ステロイド外用薬を中心とした薬物療法
外用薬については、種類や強さ、塗る量や回数、使う期間などを、わかりやすく具体的にお伝えしています。毎日のケアは大変ですが、続けやすい方法を一緒に考え、効果を実感していただきながら、皮膚の状態をしっかりコントロールできるようサポートしています。
また、アトピー性皮膚炎の治療には、新しいお薬も保険で使えるようになっています。これまでの治療でなかなか良くならない場合は、ステロイド外用薬以外の最新の治療法も選択肢としてご提案しています。
アトピー性皮膚炎はすぐに治る病気ではありませんが、適切なスキンケアと治療を続けることで症状をコントロールできます。
症状が長引いたり、ひどくなるときは、早めに医師に相談しましょう。
ステロイド外用薬
ステロイド外用薬は、過剰に起こった免疫反応を抑え、炎症をしずめるお薬です。炎症の程度や皮膚の状態によって、適した種類や強さのお薬を処方します。
小児科で使う多くのステロイド外用薬は、正しい量と期間で使う限り、副作用の心配はそれほど大きくありません。ただし、強いランクのお薬や長期間の使用では、皮膚が薄くなる・毛細血管が広がるといった副作用が出ることがあるため注意が必要です。
また、外用薬はただ塗るだけでは十分な効果が出ません。ご家族がわかりやすいように、「塗る量」「回数」「使う期間」を具体的にお伝えし、続けやすく効果を実感できるようサポートしています。
免疫抑制外用薬(タクロリムス軟膏)
タクロリムス軟膏は、ステロイド外用薬と同じく炎症をしっかり抑える効果があり、2歳以上のお子さんから使うことができます。
皮膚が薄くなるなどの副作用がほとんどないため、長期間の治療が必要な方にも使いやすいお薬です。
この薬は、皮膚の状態が悪い部分(湿疹の部分)にだけよく吸収され、正常な皮膚からはほとんど吸収されにくいという特徴があります。そのため、効かせたい場所にはしっかり効き、健康な皮膚には影響しにくい点が大きなメリットです。
使い始めは、ヒリヒリした刺激感や熱感、かゆみを感じることがありますが、多くの場合、1週間ほどで落ち着きます。
保湿剤
アトピー性皮膚炎の肌は乾燥しやすいため、毎日の保湿ケアがとても大切です。
お風呂やシャワーの後は、できるだけ早く保湿剤を塗るようにしましょう。
乾燥が強いときは、朝と夜の2回塗るのも効果的です。
保湿剤には、軟膏・クリーム・ローション・フォームなどいろいろなタイプがあり、季節や塗る場所、患者さんの好みに合わせて選びます。
外用薬の上手な使い方
外用薬は、ただなんとなく塗るだけでは十分な効果が出ません。
体の場所によって薬の吸収力が違うため、塗り方がとても大切です。
塗り方のポイント(アトピー性皮膚炎)
- 清潔で乾いた手で塗る
- こすらずやさしく伸ばす
- 保湿剤を併用して乾燥を防ぐ
- 入浴後の塗布が効果的
塗布量の目安
「1FTU(フィンガーチップユニット)」が目安です。大人の人差し指の先から第一関節まで出した量(約0.5g)で、手のひら約2枚分に塗れます。
塗布期間・回数
アトピー性皮膚炎は、見た目が良くなっても皮膚の中に炎症が残っていることがあります。
徐々に塗る回数を減らす「プロアクティブ療法」が効果的です。
「良くなったらやめ、悪化したらまた塗る」という方法(リアクティブ療法)では、症状をくり返しやすくなります。
外用薬の使い方はお子さん一人ひとりで異なります。わからないことや不安なことがあれば、どうぞ遠慮なく医師にご相談ください。
アトピー性皮膚炎の最新治療について
アトピー性皮膚炎の治療は、この数年で新しいお薬が次々に保険で使えるようになっています。特に小児でも使えるものには、以下のようなお薬があります。
- JAK阻害薬(外用薬・内服薬)
- PDE4阻害薬(外用薬)
- 抗IL-4/IL-13受容体抗体(注射)
- 抗IL-31抗体(注射)
これまでの保湿やステロイド外用薬で治療が難しかった方、ステロイドを減らしたくてもなかなか減量できなかった方などに、新たな治療の選択肢が増えています。
当院でも、患者さまの症状や経過に合わせ、ステロイド以外の治療法も視野に入れながら、一人ひとりに合った治療を一緒に探してまいります。